ISONAGA AKIKO
「写真=真実ではない」/ホンマタカシ たのしい写真 (平凡社)

この本を思わず手に取ったのは「そもそも、いい写真って何だろう」という素朴な疑問からでした。
カメラマンではない私が撮影した写真が記事に使われることがあります。
ライターである私に求められるのは、記事に説得力を与えるような写真、ということになるでしょうか。
そのためには構図だったり、美しさだったり、記事で説明している瞬間を捉えているかということだったり(微妙な写真も多々ありますが汗)そんなことを意識して撮影しています。
最近は画像加工ソフトを使ってトリミングで構図を調整したり、彩度をアゲアゲにして見栄えのいい写真に“修整”できるので、「それっぽい」「なんとなくいい感じ」に仕上げることはできます。
でも、当たり前のことなんですが、写真を生業としている人の本気の写真を目の当たりにすると、自分の写真は「なんとなく」「それっぽい」以外の何物でもないと思い知らされます。

それなら、写真のど素人である私は写真にどう向き合えばいいのか。そんな想いが芽生え始めていた時につい、目に止まったのがこの本でした。
著者のホンマタカシさんは、写真(=真実を写す)の真実性に疑問を呈し、一貫して「写真とは何か」を追究する作品を手がけてきたカメラマンと後で知り、この本に手が伸びたのは必然だったと感じました。
本書は、講義編、ワークショップ編、放課後編、補習編の1〜4章からなります。全てを通して読むと、表紙に「よい子のための写真教室」とあるように、写真教室に通ったかのような流れで写真論に触れることができます。
特に気に入っているのが第2章のワークショップ編。「写真のリアルとは何か」「写真=真実ではない」「不自由な状態=制限が写真を楽しくする」といったことを、実際にホンマさんが行ったワークショップの事例を紹介しながら伝えてくれます。
どれも目からウロコな話だったのですが、特に「制限を与えて撮影する」という発想は、いい写真を撮るために新しいレンズが欲しいと物欲に走っていた私の目を覚ませてくれました。(ホンマさんが言いたい本質とはずれているかもしれませんが)
ほとんどの人がスマホというカメラを日常的に持ち歩いている今、誰でも興味深く読むことができる一冊かもしれません。
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ホンマタカシ たのしい写真/平凡社
定価 1600円+税